映画『シチリア・サマー』感想

シチリア・サマー

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【あらすじ】
1982年、初夏のシチリア島
16歳のニーノと17歳のジャンニは、バイク同士の衝突事故をきっかけに運命的な出会いを果たす。
育った環境も性格もまったく異なる彼らはひかれあい、友情は激しい恋へと変化していく。
かけがえのない時間を過ごす2人だったが、彼らのまぶしすぎる恋はある日突然の終わりを迎える。

 

 

ラストの衝撃に鳥肌が立った。
心がぐちゃぐちゃのまま映画館を出ることになった。

美しさと悪意を、同時に、大量に浴びた。
ただただ、ひたすら苦しい。
そして、どうして……という怒りが溢れてくる。

ジャンニが同性愛者なのだと分かった瞬間から、優しくしてくれていた人々の目が変わる。
まるで犯罪者を見るような、信じられないという目でジャンニを見つめる。
ジャンニの母親すら、彼の味方にはなってくれない。

酷い言葉を吐かれ殴られるジャンニには、どこにも居場所なんてないように見えた。
同性が好きだというだけでどうしてこんな目に遭わないといけないのかと、怒りが湧いて仕方なかった。

ジャンニを暗い場所から引きずり出してくれたニーノは、まさに光だった。
ニーノの無邪気でまっすぐな笑顔を見ていると、悪いことなんて起こらないんじゃないか、大丈夫なんじゃないかと思えた。

周りによって引き裂かれても、ニーノはジャンニを迎えに来てくれた。
しかしジャンニの母親が二人を見送りながらゆっくりと扉を閉めた瞬間、ああ、二人は“日常の世界”から完全にしめ出されてしまったのだ……と思った。

ニーノとジャンニ。
二人の愛に満ちた時間が、ずっと続いてほしかった。
初夏のイタリア・シチリア島の美しさが、こんなにも残酷に映ることがあるのかと、心が軋んで苦しい。


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何よりも驚くのは、この物語が実際に起きたある事件に基づいていること。
愛し合う2人の若者の命が奪われたその事件は当時のイタリアを震撼させ、今日までイタリア最大規模の団体として活動を続けるLGBTIに関する非営利団体“ARCIGAY(アルチゲイ)”が設立されるきっかけとなった。
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(公式サイトより引用)


実話に基づいた作品であることは、公式サイトを読んで知っていた。
しかしどんな事件だったのかは敢えて調べずに観に行った。
だからこそラストが衝撃的で、ショックだった。

観終わってからパンフレットを読み、あれは伏線だったのかも……というシーンに気づき、またショックを受けた。


私にとって忘れられない作品となった。
観ることができて良かったと思う。

 


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ポスターがとても素敵。

 

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